患者さんが治療イスに座っていただくと、エプロンを掛けます。エプロンは、半面が防水処理された紙エプロン(図1)を患者さん毎に取替え使い捨てにしています。
「何故、紙エプロンを一回ごとに使い捨てにするのか?」
見た目の清潔さを与えるためと思われている患者さんが多いと思いますが、サイトウ歯科では次に述べるような理由で導入しています。
私が学生時代の治療実習では、患者さんが変わっても同じものを使用していました。当時は患者さんの衣服が汚れないようにする目的で布エプロンを使用していました。それだけの目的であれば、同じエプロンを使いまわししても問題はありません。わざわざ費用を掛けて一回ごとに使い捨てにする目的は、患者さんの衣類を汚さないという目的のほかに、使いまわしによって他の患者さんにエイズやウイルス性肝炎などを感染させる危険性を回避するためとサイトウ歯科では考えています。
歯を削ったり、乾燥するために圧搾空気をかけることで、患者さんの血液・唾液の飛沫がエプロンに飛び散ったり、血液・唾液の付着した器具をエプロンの上に置いたりします。また、うがいする時にも多量の唾液(多くの場合、血液が混じっています)がエプロンに付着します。特に、麻酔をした後では、唇が思うようにならないためにエプロンを汚してしまいます。したがって、1度使用したエプロンには血液・唾液が多量に付着していると考えるのが自然です。
もちろん、汚染されたエプロンを、次の患者さんにかけただけでは感染しません。術者が、エプロンの上に歯科器具を置いて血液・唾液で汚染された器具を使用をしたり、エプロンに触れた汚染された手で歯科治療を続けることで感染の可能性が起きてきます。
紐のないエプロンでは、エプロン・クリップが必要です。患者さんは、エプロンのような大きいものには目がゆきますが、エプロン・クリップのような小さなものを患者さん毎に取り替えているかまでは目が届かないと思います。普通は、同じエプロン・クリップを壊れるまで使いまわししています。
使い回しされているエプロン・クリップは、多くの患者さんの血液・唾液で汚染されています。このような汚染区域(直接患者さんの血液・唾液が付着する可能性のある区域)で使用された用具を、汚染させたくない区域(非汚染区域)に戻して再使用することは、歯科医院全体を汚染区域にすることになり、院内感染の温床となります。
やはり、使い捨てには出来ないエプロン・クリップは、1回ごとに取替えて洗浄・滅菌処理後再使用すべきです。ところが、滅菌対応の(詳しくは高圧蒸気滅菌器対応の)エプロン・クリップは市販されていません。まだ、エプロン・クリップまで患者さん毎に取替え、滅菌するレベルで考える時代ではないのです。
サイトウ歯科では、自作したものを使用しています。1989年に、水や薬品に強く、135℃という熱に耐える素材を探しました。クリップはヨドバシカメラの現像コーナーで現像用のステンレス製クリップ(図2)を見つけ、ロープ(図3)は趣味のヨット用ロープが耐熱性があり、使用することにしました。
この二つの素材を加工して、治療が終るごとに取替え洗浄滅菌して使用しています(図4)。
直接患者さんの治療にたずさわる区域(汚染区域)で使用されたものは、非汚染区域を汚染させないような管理のもとに使い捨てにするか、または、再使用する必要があるものについては、汚染区域内で洗浄・滅菌処理してからはじめて非汚染区域に保存します。明確に汚染区域と非汚染区域に分けようとすると、エプロン・クリップの洗浄・滅菌は無視できない大切なことです。
サイトウ歯科では、私の考えうる範囲で、非汚染区域を汚染させない対策が導入されています。そのような視点で見ることの出来る人には、私どもの診療室の創意工夫の数々があぶり出しのように見えてくるでしょう。ここまでの院内感染対策をしない限り、安全な診療室とはいえないと18年前に考え実行し、も改良を重ねてきましたが、基本的には当時の方法を踏襲しています。
汚染区域と非汚染区域に分けずに一緒にしてしまうことを、
私の知り合いの編集者が汚い言葉ですが、わかり易い言葉を引用されました。今でも思い出して笑ってしまいます。その言葉とは、「糞も味噌も一緒にしてしまう。」
新宿サイトウ歯科は、何も宣伝していませんし、ご紹介でない患者さんの治療はお引き受けしていません。しかし、経営状態になんら問題はありません。裏を返せば、見せ掛けでない本物の院内感染対策の重要性が理解できる「社会的に余裕のある人々」が存在するということです。戻る
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