「院内感染対策」というテーマは、私(齋藤博)の人生において生涯忘れることができないものです。1991年9月に、突然「一日でも早く、サイトウ歯科に院内感染対策を導入しなければいけない」と神の啓示のごとき閃きを感じて、夢中になって院内感染対策をサイトウ歯科に導入しました。理由は、今までの歯科治療システムでは、エイズ・B型肝炎・C型肝炎などという重篤な病気を引き起こすウイルスによる感染を防止できないと気付き、早急に対策を導入しなければいけないと確信したからです。
エイズが流行するまでは、血液で感染するウイルスに対する感染対策を日常診療に取り入れることなど考えられない時代でした。私の母校である東京医科歯科大学歯学部時代に教育された歯科治療システムでも、 血液で感染するウイルスについてまでは考慮していませんでした。消毒液も、ウイルスに効果のある薬液ではありませんでした。それでも、当時は問題になりませんでした。問題にならないと言うよりも、ウイルスで感染する病気の存在自体が解明されていなかったので、病気に感染しても奇病に感染したと思われていたのかもしれません。肝臓癌の主な原因になるC型肝炎でさえ、非A非B型肝炎と言われて、心配する必要のない肝炎と思われていた時代でした。
様々な人が出入りする医療機関では、現実にそった感染対策しか導入できません。飛沫で感染するウイルスに対して、あるレベルまでの感染対策は可能ですが、確実な対策を行うには、「隔離」も必要になり、現実的ではありません。そこで、私は血液で感染するエイズ・ウイルス性肝炎・成人型T細胞白血病などを確実に感染防止する対策導入に踏み切りました。
エイズやウイルス性肝炎は、血液を介して感染します。もちろん、血液の混じった唾液でも感染します。歯科治療は唾液の中で行っていると言っても過言ではありません。悪いことに、治療中に歯肉などから出血することが多く、唾液=血液と考えて感染対策をする必要がありました。
歯科での院内感染対策の必要性が世間で認識されない時代に、あまりにも真剣に院内感染対策導入に取り組んだため、患者さんから私がエイズに感染しているのではと思われたかもしれません。
院内感染対策を導入するといっても、コンセプトをもった対策でないと、効果は半減してしまいます。試行錯誤の末、たどり着いたコンセプトは次に述べることです。
血液を媒介にして感染するウイルスの対策には、治療イスに座った患者さんの血液や血液付着物が所定の区域から外に出ないようにすれば院内感染は防止できるはずです。また、誰が感染者か判らないので、治療イスに座った患者さんの誰もが感染者と考えることとしました。こうして産まれたのがサイトウ歯科独自技術の「サイトウ・メソッド」です。
「サイトウ・メソッド」では、感染源として治療イスに座った患者さんの口から出る血液・唾液・口腔内にある補綴物と定義しました(図1)。これらの感染源を(図2)のように赤茶色に塗った治療イス周りと流しの一部(汚染区域と決めた箇所)以外には出さない対策を導入しました。(図3)のように、医療器具などは非汚染区域から汚染区域に入れることは出来るのですが、汚染区域に入ったものは全て安全対策(オートクレーブ滅菌、熱を加えられない1部のものについては薬液消毒)を施されないと非汚染区域には戻せないようにしました。内(汚染区域)から外(非汚染区域)の対策ができれば、ウイルスの含まれた血液が拡がらない、すなわち他の人が血液にふれることがないので院内感染は起こらないという考えです。
1992年に患者さんに見ていただき、院内感染対策に協力していただくために制作したアルバム
記事の案内
(1回目) 内から外の対策
(2回目) サイトウ・メソッドは、歯科専門誌に掲載されています。
(3回目) これは危険!感染します。
(4回目) エプロン・クリップも滅菌しています。
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